研究概要 |
1.アブレータ熱防御システム信頼性向上,高精度設計手法の開発に向けて,アーク風洞気流にさらされたアブレータ供試体の熱応答を評価する解析手法を開発した.本手法では,アブレータの熱応答を2次元で解き,加熱面の境界条件はアーク風洞気流条件を用いたアブレータ周りの流れ場解析との連成により求めた.アーク風洞気流条件は風洞運転条件を用いた加熱器内部の流れ場解析とノズルにおける膨張流れ場解析を行うことで決定した.開発した連成解析手法を用いて,JAXA/ISASアーク風洞における加熱試験で得られたアブレータ熱応答の再現を行い,表面触媒性,表面窒化反応,表面粗さが熱応答に与える影響を調査した.実験結果との比較では,小さな触媒効率を仮定すれば本連成解析手法により測定温度を再現できることがわかった.また本加熱試験条件において表面粗さによる影響は少ないものの,窒化反応がアブレータ熱応答に与える影響は非常に大きいことが判明した.以上の成果はJTHT誌に掲載が決定している他,図書出版1件が決定している. 2.アブレータをはじめとする炭素系耐熱材料の酸素原子触媒性を解明するために,加熱したグラファイトやC/C製の供試体周りの分光計測を行い,得られた酸素原子濃度分布から酸素原子触媒効率を決定した.グラファイト,C/Cともに圧力26.7Pa,温度1600Kにおいて最高約0.2の触媒効率を得た. 3.アブレータをはじめとする炭素系耐熱材料の窒素原子による損耗特性を解明するために,JAXA/IATのプラズマトロンを用いてグラファイトの加熱試験を行った.得られた損耗特性から窒化反応確率を算出した.プラズマトロン気流中の窒素原子密度の不確かさがあるものの,温度2000Kにおける窒化確率0.5を得た.今後は追実験を行い実験データの拡充を図るとともに,気流の熱化学状態を高精度に評価することによって窒化反応確率を再評価する.
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