研究概要 |
アブレータをはじめとする炭素系材料の耐熱性能評価手法の高精度化を目指し,(1)グラファイト表面上で生じる窒化反応による損耗現象の高精度モデル化を行い,(2)昨年度開発した風洞気流と供試体熱応答を同時に解く連成数値解析コードに導入し,(3)加熱試験結果と連成数値解析結果とを比較することにより窒化反応モデルの検証を行った。 (1)では,昨年に引き続きJAXA総研本部の誘導結合プラズマ加熱風洞を用いてグラファイトの加熱試験を行い,損耗データの拡充を行った。得られた損耗特性から推定されたグラファイト窒化反応確率は,表面温度2000Kにおいて約0.003であった。一方で本試験条件において風洞気流を光学的に評定することで,昨年度明らかになった風洞気流中の窒素原子数密度に関する不確かさが改善され,得られた窒化反応モデルの精度が大幅に改善された。 (3)では,(1)で得られた窒化反応モデルを気流-アブレータ連成数値解析コードに導入することによって,風洞加熱試験環境におけるグラファイト熱応答の再現解析を実施した。本研究で得られた窒化確率を用いることにより,加熱試験で得られたグラファイト損耗量を定量的に再現することに成功した。しかしながらグラファイト形状変化の詳細など定性的な一致はいまだ得られていない。これは本研究で用いた窒化確率が温度に依存しない形で表記されたことに原因があると思われ,窒化反応確率の温度依存性の解明に関する課題が残った。また一方で,過去にPark等によって得られた窒化確率0.3を用いた解析結果は実験結果を大幅に過大評価,実験結果を再現できないことがわかった。これは本研究で得られた窒化反応モデルの優位性を示している。
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