本研究は、特に大水深域での極めて大きな静水圧作用や、石油や天然ガスといった高温のエネルギー輸送に適した海洋パイプラインとして世界的に注目されているパイプインパイプシステムについて、その構造設計に関わる構造解析モデルの構築と、構造挙動の把握を目的としたものである。本年度の成果を要約すると以下の通りである。 (1)内側のコアを厳密な2次元弾性論に基づく形でモデル化し、静水圧作用時における座屈挙動の定式化を行った。これにより、外側パイプのみが座屈現象に至る局部座屈と、合成断面全体が一体となって変形する全体座屈の2通りの全く異なるモードが存在すること、また局部座屈荷重は、コア厚によらずほぼ一定の値となり、コア厚の減少とともに全体座屈に移行することを明らかにした。 (2)局部座屈荷重についてはコア厚によらずほぼ一定値をとるという性質を利用して、局部座屈荷重の簡易算定式を提案した。さらにこの提案式が、厳密解に対して非常によい精度を得ることを確認した。 (3)内側のコアを3次元弾性論に基づき定式化し、軸圧縮力作用に対するコアの力学的役割について検討を試みた。この結果、座屈荷重の増加という観点では、静水圧作用時に比べてコアの果たす役割は非常に小さいことを明らかにした。 (4)高ポアソン比のコアに対しても適用可能であり、かつ離散化解析も可能な構造解析モデルとして、個別要素法および粒子法に基づく新しい弾性連続体モデルについて提案を行った。これは現在基礎的な解析モデルの性質の検証段階であり、来年度以降更に詳細な検討を行う予定である。
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