本研究は、特に大水深域での極めて大きな静水圧作用や、石油や天然ガスといった高温のエネルギー輸送に適した海洋パイプラインとして世界的に注目されているパイプインパイプシステムについて、その構造設計に関わる構造解析モデルの構築と、支配的な作用外力となる静水圧や曲げ荷重作用時の構造挙動の把握を目的としたものである。本年度の研究により得られた成果を要約すると以下の通りである。 (1)昨年度導出した、極大静水圧作用により外側パイプのみが座屈する局部座屈モードに対応する座屈荷重の簡易算定式に加え、全体座屈荷重についても簡易評価を可能とする方法について検討した。具体的には、パイプインパイプ断面を単一のパイプ断面とみなし、その中でコアのせん断変形を考慮することにより、精度よく全体座屈荷重を評価できることを示した。 (2)パイプインパイプの曲げ変形についての検討を開始した。本年度は曲げ変形による断面のつぶれ(Brazier効果)を考慮した構造解析モデルを導出した。またこの構造解析モデルを用いて曲げ作用に対するコア部材の力学的役割を考察した。これによりパイプインパイプがコアの影響により、断面のつぶれを大幅に抑制させ、滑らかな曲げ特性を有することを解析的に示した。 なお本研究の最終年度となる平成20年度は解析モデルの高精度化に加え、室内実験を検討している。これにより解析、実験両面から曲げ特性の詳細な評価を予定している。
|