本年度は昨年度までに構築したソナーアレイを使って、小型3次元ソナーの構築を目標として研究を行った。具体的には、32個の受波素子から収録される信号を同期してコンピュータに取り込むシステムを構築し、ソフトウェア的にこれらを信号処理することで電気的にビームフォーミングが可能な状態とした。これにより、1回の送波につき64本の受波音響ビームを生成し、水平面内の音響映像を取得することが可能となった。3次元ソナーの構築には送波についてもビームフォーミングを行う必要があるが、このシステム構築には多大なコストがかかるため、送波は1チャンネルのみとして16個の送波素子に同期信号を入力し、物理的にソナーヘッドをチルトさせながらデータを取得することで、疑似的に3次元ソナーの出力を得られるシステムを構築した。 このシステムを実験水槽に入れて、ソナーの探知距離、分解能および3次元計測について評価試験を行った。探知距離の評価試験では、中空の小球をターゲットとして計測試験を行い、設計仕様として設定した10[m]の距離において十分な検波を得ることを確認した。分解能に関する評価試験では、2本のパイプを平行に並べてその間隔を変化させながら2つの信号を分離可能かどうか確認することで、角度分解能および距離分解能を評価したところ、設計仕様を満たす結果を得た。3次元計測に関する評価試験では、エアキャップシートを巻いた四角柱を水槽に入れて、この形状を観測する試験を行った。その結果、四角柱の平面を観測可能なことを確認した。以上により、構築したソナーシステムの有効性を確認した。 本研究の成果をもとに、信号処理部分をDSPに実装して組み込むことにより、自律型水中ロボットに搭載可能な小型3次元ソナーが開発可能となる。水中構造物や海底地形をAUVが観測するニーズは今後増加すると思われ、3次元ソナーは有用なセンサとして期待される。
|