北太平洋の30海域の5年間分の海象頻度分布サンプルを基にして、海象の時間相関と空間相関(海域間相関)を取り入れた海象確率モデルを構築した。海象は、うねり3成分(波高、平均波周期、卓越波向)、風浪3成分(波高、平均波周期、卓越波向)、風2成分(平均風速、卓越風向)の合計8性分である。海象頻度分布サンプルは波浪推算により得られた海象時系列を統計処理して得られたものである。そのため、時間相関と空間相関が欠如しているので、もとの時系列サンプルから、時間と空間の相関推定式を求め、確率モデルに導入した。これらの相関は、うねり成分と風浪・風成分について、独立に与えられる。相関の導出には主成分分析を利用した。うねり成分は風浪成分よりも時間相関は長く続き、空間相関は広範囲におよぶ。この確立モデルを用いた海象シミュレーションの結果、荒天海象が時間の経過とともに北太平洋を西から東に伝播していく様子を再現することができた。これは、実際の北太平洋の海象伝播の様子と一致する。ただし、正確な伝播速度についてはデータの不足により検証ができなかった。海象シミュレーションの統計量については、元の海象頻度分布サンプルと比較した結果、十分に再現できていることがわかった。この成果は、船舶の運航性能推定のために海象情報を提供する手法として極めて実用性が高い。そのため、この研究で作成されたプログラムコードを本手法のプロトタイプコードとしてまとめた。
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