米国アイオワ大学のFrederick Stern教授らが開発したCFDSHIP-Iowaコードを導入し、船舶復原性予測への適用性を検証するため、波浪中を10度横傾斜して一定速度にて航行するWigley船に働く波浪強制力および流体力の計算を行った。その結果、デッキ上までグリッドを生成し、オーバーセットグリッド法を適用することで、海水打ち込みが発生するような大波高中においても、船体運動および船体に働く力・モーメントを計算の破綻無しに求められることを確認した。コードの更なる検証のため、乾舷を大きくして大傾斜しても船内に水が流入しないWigley模型船を製作し、この模型船を用いて波浪中を大傾斜して航行する船舶に働く波浪強制力および流体力の計測を行った。また、同様の実験を既存のコンテナ模型船についても行い、CFDコード適用の検証に不可欠な定量的実験データを取得した。 この他、流体の大変形を取り扱うことのできるMPS法を用いて、パラメトリック横揺れ防止のためのアンチローリングタンク性能推定を試みた。タンク内水の自由減衰をMPS法にて計算し、タンク模型を用いた試験結果と比較した結果、ダクト高さ0.75cmという狭水路の場合でも、粒子間隔を0.15cm程度にとることで、タンク水の移動周期および粘性による自由減衰を精度良く計算できることを確認した。さらにMPS法によるタンクの自由減衰数値実験を援用したアンチローリングタンク装備船のパラメトリック横揺れ予測法を構築し、ポストパナマックスコンテナ模型船についてシミュレーション結果と自由航走模型実験結果の比較を行った結果、タンク装備時のパラメトリック横揺れの発生領域および横揺れ振幅が精度良く求められることを確認した。これにより、模型実験を全く必要としないパラメトリック横揺れ防止のためのアンチローリングタンクの設計が可能となった。
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