研究概要 |
筋湯温泉および別府温泉(いずれも大分県)において地下から湧出する熱水やその付近の高温土壌を合計21試料採取し,保温しながら実験室内へ輸送して培養実験に供した。本年度は温度のみを数段階に変化させ,酵母エキスを主成分とした人工培地および廃糖蜜を主成分とした自然培地を用いた培養実験を行った。50〜80℃,嫌気条件下で培養実験を行い,7〜10日間の培養後,微生物の増殖が認められた試料については新たな培地に継代培養し,これを5代にわたって繰り返すことにより,高温・嫌気条件下で増殖可能な微生物をスクリーニングした。 各継代培養液について微生物群集構造を解析した結果,継代が進むにしたがって微生物種数が減少し,微生物種の淘汰が認められたため,本手法によって好熱性微生物のスクリーニングが可能であることが示された。酸性物質を生成し培養液のpHを3.0〜4.0にまで低下させる集積培養菌が8種類(人工培地・50℃で3種類,自然培地・50℃で4種類,同・70℃で1種類),バイオフィルムを生成する集積培養菌が2種類(いずれも人工培地・50℃)スクリーニングされた。これらのバイオフィルムは微生物細胞が集まって構成されており,1cm^2あたりに約2.0×10^6cellsの微生物細胞が観察された。バイオフィルムを生成する集積培養菌の一つについて,微生物群集構造解析によって分離された塩基配列の異なるDNAをそれぞれシークエンシング解析した結果,硫黄酸化細菌の一種であるThiomonas thermosulfatasが集積培養菌の中で優勢種として増殖していることが分かった。Thiomonas thermosulfatasが栄養塩として利用する硫黄分(チオ硫酸ナトリウム)を培地(自然培地)に添加して50℃で培養した結果,バイオポリマー生成量の飛躍的な増加が認められたため,この微生物がバイオフィルムの生成に関わっていることが推察された。 このように平成18年度は,石油の増進回収に有用なバイオフィルム生成好熱性微生物や,in-situでの鉱物資源のバイオリーチングに有用な酸生成好熱性微生物が複数種得られた。
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