近年、環境問題の顕在化・広域化に伴い、その解決方法の1つとして各種の廃棄物処分場が計画・建設されるとともに、廃棄物を封じる遮蔽バリヤの長期安定性の向上と科学的検証が緊急な課題になっている。たとえば、一般廃棄物を対象とする半地下式の処分場では、これが生活空間に近接して建設されることから、確かな遮水が重要であり、遮水バリヤの安定性の解明が求められている。本研究は、この要請に応えて、遮水バリヤの劣化に係わる物質移動と進行性破壊に焦点を絞り、基礎的研究を行ってきた。具体的には、世界に先駆けて、「X線CTを用いた高温・荷重環境での遮水構造耐久性試験法」を構築し、遮水バリヤの内部での構造要素の相互干渉と変形・破壊、並びに移流拡散を可視化・定量化することによって、漏水に至るまでの遮水バリヤの劣化プロセスを明らかにする実験的研究を実施した。 平成18年度では、X線CT専用載荷機能付移流拡散実験装置を開発した。X線CT室内域で実施可能なあらゆる実験は、1)X線の物理特性、2)撮影領域内の空間的制限および3)被検体テーブルの積載重量の制限によって影響を受ける。これらの点をすべてクリアした移流拡散実験装置を開発し、まず装置としての機能性を確認・評価した。 平成19年度では、遮水シートの破損パターンとして、円形、長方形、複数円破損、地盤との設置条件を変えた漏水実験を実施、破損形状および設置条件が漏水メカニズムにどのような影響を及ぼすかについてX線CT画像を用いて評価した。破損面積を一定とし、破損形状の影響のみに着目した場合、長方形破損の方が漏水量が多いことが判明し、実際の現場においては、施工時に割烈性破損について十分配慮が必要であることがわかった。また、設置条件として、地盤に完全密着している場合は、破損形状にのみ影響を受けるが、完全密着でない場合、破損形状に関係なく労水量が増加することが判明した。以上の研究成果は、1件の学会発表で発表されており、20年度に土木学会論文集に投稿予定である。
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