CO2排出量削減は限りあるエネルギー資源の効率的利用を示す一つの指標として重要な意味を持ち、積極的なCO2排出削減技術の開発および制度設計が進められている。一方、部門別の最終エネルギー消費に目を向けると、講産業部門に比較して民生部門の増加の割合が高く、とりわけ家計部門におけるエネルギー消費量の増加が著しい。市民生活におけるエネルギー消費抑制を実現するため、一つの有力なオプションとして分散発電システムに大きな期待が寄せられている。分散発電の特徴としてエネルギー利用効率アップ、排熱の有効利用、送電ロスの回避、天然ガス転換・水素燃料利用によるCO2排出削減等が期待されている。中でも使用時にCO2を排出しないクリーンエネルギーとして水素燃料電池が着目されており、その実用化のために急速な技術開発が進められている。 しかし水素燃料が社会的に普及した社会である「Hydrogen-energy Orierlted Society」を実現させる際に、水素の発生・貯蔵・使用およびそれを支えるエネルギー供給インフラ整備も含めてどのような資源が要求され、その結果発生する環境負荷は社会全体として増えるのか減るのかといった包括的な議論は少ない。環境負荷とは化石燃料消費量・埋立地消費量やCO2排出量だけではなく、触媒に用いられるレアメタルの使用量や、レアメタル製錬時に要求される資源消費・CO2発生等のエコリュックサックも考慮したうえでライフサイクル視点からみた評価を行う必要があると考える。本研究は分散型水素供給・利用システムの環境・経済影響分析手法の開発を目的とする。より具体的には水素製造・貯蔵・利用に関わるプロセスに着目しつつ費用・資源エネルギー投入・環境負荷発生について、産業連関表をベースとした環境影響評価手法の開発を行う予定である。 本年は特に水素製造に関わる環境・経済影響分析を行った。
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