使用済み製品のうち、社会から排出されスクラップとして回収されるモノと、排出されていない退蔵物、あるいは回収されずに消散しているモノ、回収されずに最終処分されているモノがあると考えられる。これは、回収工程における歩留りであり、回収率と言える。そのためには、回収率の分母となる使用済み製品の発生量を把握する必要があるが、実態を把握することが困難であり、推計する必要がある。そこで本年度は、鉄鋼、アルミ、銅の3素材と、Zn、Cr、Niの3物質に着目し、動的にマテリアルフローを分析し、スクラップの回収過程に関するフロー分析ならびに回収性に関する要因分析をおこなった。さらに、昨年度の研究を進めるに従い、物質の回収ポテンシャルである物質ストックは、重要であるにも係らず、今まで殆ど定量化されていないことが分かったため、物質ストックを推計する新しい手法についても検討した。 鉄鋼材、アルミ、銅を対象に、使用済み製品からのスクラップ回収に至る過程について、経済的要因を考慮した分析をおこなった結果、鉄鋼材において、老廃スクラップの回収に対しスクラップ価格が影響をしていることがわかった。アルミニウム、銅の非鉄金属のスクラップの回収においては、鉄鋼材とは異なり、スクラップ価格以外の要因が、スクラップ回収に与える影響が大きいことがわかった。 さらに、鉄鋼材のメッキや黄銅の合金元素として用いられるZnや、ステンレス鋼材の添加元素として用いられるCrやNiに着目し、動的にマテリアルフローを分析し、それらの回収性を評価した。 物質ストックを導出する新しい手法として、本研究でおこなってきた動的分析の他に、積み上げ法(bottom-up approach)による推計方法、ならびに、夜間光衛星画像を用いた推計方法も検討し、それぞれの方法による推計結果を比較することで、3つの手法を補完的に用いることが出来ることがわかった。
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