多スケール乱流間の非線形過程を通じたエネルギー伝達を実験的に解明する研究である。 九州大学の直線プラズマ装置にて、乱流揺動による運動量輸送量(Reynolds応力)を計測可能な静電プローブを開発し、実験解析を実施した。磁場を固定し中性ガス圧を低下させた実験で、乱流が遷移する臨界放電条件にて、微視的ドリフト波揺動(7-8kHz)と低周波帯状流(〜0.4kHz)の共存系を見出した[1]。詳細な非線形解析の結果、ドリフト波の径方向波数が帯状流の周波数で変調され、ドリフト波の波面が規則的にたわみ、理論で予測されたパラメトリック変調不安定性が実際に起こることを見出した。また、ドリフト波間、ドリフト波一帯状流間の非線形エネルギー移送関数の符号を評価し、ドリフト波間では順カスケード[2]、ドリフト波-帯状流間では帯状流の強度が極大値を持つ空間点で帯状流への逆カスケードを同定した。さらに移送関数の符号がスペクトル空間・実空間内で変化し、帯状流を介した揺動の非局所的・非線形のエネルギー伝達が起こり得ることを発見し、乱流プラズマの位相空間・実空間の自律構造形成過程への理解を飛躍的に進展させた[3]。さらに、径方向位置をスキャン可能なReynolds応力測定プローブをポロイダル方向に複数増設し、乱流遷移が発生している放電にて実験解析を行い、遷移後に低周波(200-600Hz)のポテンシャル揺動が増大し、ポロイダル方向に積分したポテンシャルと、レイノルズ応力の間に有意な相関がみられた[4]。 原子力機構JFT-2M装置の研究では、測地線音波固有モードの磁気面境界付近の振る舞いを明らかにし、これまで検定が困難と考えられてきた実験的な磁気面検定法の提案を行った意義がある[5]。
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