大型ヘリカル装置(LHD)における高イオン温度プラズマは、イオン温度勾配の急峻化により実現しており、イオン熱輸送の障壁的様相を示している。プラズマの中心部では、イオン温度が電子温度よりも高く、ヘリカル系の新古典輸送に起因する両極性径電場として、負電場(イオンルート)が、理論解析から予測されていた。不純物の吐き出し(後述)により、荷電交換分光を用いた中心部の径電場計測が困難な状況であったが、平成20年度、重イオンビームプローブ(HIBP)計測により、中心部では、(大きさも含めて)ほぼ理論予測通りの負電場が形成されていることが検証された。このことは、本課題での理論予測の実験適用性を担保するもので、種々のヘリカル系における中心部電子ルート閉じ込め(Core Electron-Root Confinement)における電子ルートの理論予測の実験検証と併せて、ヘリカル系における改善閉じ込めモードに対応した径電場理論解析の広範な妥当性を確認することができだ。本課題で展開してきた径電場解析に基づいて、核融合炉心級プラズマに向けてのさらなる高イオン温度プラズマの実現性、その高密度化、そこでの径電場分岐性を活用した閉じ込め改善シナリオを提示していく上での確固たる根拠となるものである。 また、LHDの高イオン温度プラズマでは、イオン熱輸送の改善に伴い、中心部に存在していた不純物の吐き出しが観測され、特徴的な強い凹型不純物分布(不純物ホール)が形成される。新古典理論の描像からは、負電場では不純物の蓄積が予測されるが、この現象はその予測からは説明することができないため、何らかの異常輸送の存在を示唆しているものという認識に至っている。この不純物ホールの形成機構解明に向けて、炭素不純物や、さらに電荷数の高い不純物からの発光強度について、イオン温度勾配への依存性を系統的に調べるデータ整理をすることで、不純物ホール形成機構の解明を目指すという着眼での研究を進めている段階である。
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