本研究全体を通じた目的は、AXUVフォトダイオードとフィルタを用いた簡便な計測システムによって、周辺プラズマ中の特定粒子種から放射される特定波長域の真空紫外光放射強度の空間分布を高い時間分解能で計測し、周辺プラズマ研究に有用なデータを提供することである。実験は大型ヘリカル装置「LHD」においておこなうため、本年度は計測器の設計・製作およびLHDへの設置と予備的な計測を行うことを目的とした。LHDでは不純物として炭素のラインが強く光ることを考慮して、当初から予定していた水素のライマンアルファ線用フィルタ(122nm)に加え、中心波長155nmのCIV計測用干渉フィルタも同時に設置することにした。 LHD装置の下側ポートから、プラズマ周辺部を見込む視線を設定し、光学系およびフランジー式(真空フランジ・導入端子・フィルターマウント・スリット・ピンホール・シャッター・遠隔駆動機構)の設計・検討を行い、製作した。検出器として20チャンネルのAXUVフォトダイオードアレイ1個、データ処理用として、トランジェントレコーダモジュール(8ch)2台を購入した。製作したフランジー式に、フォトダイオードアレイ、フィルタなどの各部品を組込み、ゲートバルブを介してLHDの計測ポートに設置した。以上で実験に向けた準備が整ったので、実際のLHDプラズマで予備的な計測を行い、計測可能性の見通しを得ることができた。ただし、信号の強度は当初の予想に比べて弱く、またノイズが大きいため、干渉フィルターを介した場合には十分なS/N比を得ることができなかった。ただし、炭素不純物が非常に多いと考えられる放電では、CIVフィルターを介して、有意な信号を計測することができた。次年度はS/N比を向上させるための様々な対策を行って、目的とするデータを取得し、国際会議発表および論文投稿を行う予定である。
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