ヘリカル装置での間欠的輸送の詳細な研究には、ダイバータプラズマでの時間分解能の高い電子密度・温度計測が不可欠となる。そこで、ヘリカル装置のダイバータプラズマにおける間欠的粒子・熱輸送現象を観測するために、ミリ波を用いた電子密度(干渉計測)・温度(電子サイクロトロン吸収計測)同時計測システムを開発している。 平成19年度においては、前年度に設計及びベンチテストを行ったシステムを実際に核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)に設置し、プラズマ計測を行った。LHDでは、近年SDC/IDBプラズマと呼ばれる超高密度プラズマが得られており、これを用いたヘリカル核融合炉が展望されている。SDC/IDBプラズマにてダイバータの密度計測した結果、プラズマの蓄積エネルギーが最大となる際に間欠的に粒子が吐き出されており、それと同期して蓄積エネルギーが数%程度減少する現象が観測された。これまでも、「コア密度崩壊減少」と呼ばれるプラズマ中心密度の急激な減少が報告されているが、それに加え、小さな密度の吐き出し機構が存在していることが分かった。現在、吐き出し現象が観測される条件を整理している状況であるが、この粒子の吐出しがSDC/IDBプラズマの蓄積エネルギーの上昇を妨げている1つの要素であると考えている。電子サイクロトロン吸収計測は、プラズマに入射したミリ波の吸収によるパワー減少分から、電子温度を評価する手法であるが、計測するダイバータレグ中での光路長は約3cmと短いにも関わらず、ミリ波の屈折によるパワーの変動が吸収量よりもはるかに大きく、ECA計測による電子温度の同定は困難であった。
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