昨年度にヘリウム冷凍機を用いて試作した極低温における温度測定装置の特性試験を引き続き実施した。本年度は、転移温度〜17kのV3Ga金属超電導温度センサーを適用し、応答取得を試みた。試料ホルダーのセンサー取り付け部分に1mmφx3cmのワイヤー状のV3Gaセンサーを設置して50mAを通電し、冷凍機ヘッド温度を〜6.5Kとしてセンサーの電圧変化からセンサー抵抗値を測定したが、今年度の試作では常伝導から超伝導への転移を観測することができなかった。試作ホルダー上の温度分布を計測した結果から、センサー部分の温度がわずかに転移温度を上回っていると考えられる。これは、極低温領域でチェンバーから試料ホルダーへの輻射熱の影響が大きいこと、試料ホルダーに強度の観点から熱伝導率の低いステンレスを使用していること、金属超伝導温度センサーの周囲は電気絶縁材により覆う必要があること等から、センサーに対する冷却能力が不足していたと考えられる。次年度、伝熱計算により、アルミや銅などの熱伝導度の高い材料により試料設置部を作製し、セラミック系の熱伝導度の低い材料によりセンサー設置部周辺を作製する等、冷却能力および感度向上のための改良をさらに行う必要がある。試料の発熱に対するセンサー部温度上昇は、V3Gaセンサーの金属抵抗の変化から評価した。100mWの発熱に対して、昨年度測定したセラミック系高温超電導センサーの応答よりも1桁大きい〜25Kの変化が見られ、今後、この値を元に伝熱計算による試料ホルダーの最適化を図る。その他、温度測定の限界を決める要因の一つである電圧測定のノイズレベルを〜1/6に低減させる等の改善を行った。また、核融合炉内の中性子環境を模擬した数値計算を実施し、中性子源を用いた核融合炉材料の放射化実験やトリチウム燃料生成実験において本装置を適用させる場合に、測定すべき発熱量の見積もりを進めた。
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