ヘリウム冷凍機を用いた極低温における発熱測定装置の試験を引き続き実施した。今年度、金属超伝導温度センサーとして、転移温度〜10KのNbTi線(0.4mmφx~1cm)および〜18KのNb3Sn線(0.7mmφx~1cm)の適用を試みた。提案している手法では、超電導センサーに接している測定対象試料および試料ホルダーの冷却も必要となる。そのため、NbTiセンサーは比熱の観点からは最も感度の良いことが期待されるものの、試料ホルダー側からの輻射熱流入に起因して、転位温度まで冷却することが出来なかった。一方、Nb3Snセンサーは、冷凍機設定温度13.4K-13.8Kの約0.4Kの温度幅で超伝導から常伝導への遷移が見られた。試料発熱に対する応答感度は、冷凍機温度をセンサー温度が転位温度領域の中間となる13.6Kに保持し、抵抗素子をセンサー近傍において発熱させて評価した。センサーには100mAを通電し、抵抗素子の発熱に伴うセンサー両端の電圧値変化を応答として観測した。今年度試作した試料ホルダーでは、10mWの発熱に対してセンサー部分の温度変化が0.14Kに相当し、電圧測定のノイズレベルから、測定可能な熱量の下限値は〜1mWとなった。これは、試料(抵抗素子)を十分低温に冷却するために、試料ホルダーが試料発熱の大部分を冷凍機に流入させる構造となっていることに起因している。H19年度に取得した、低温領域における発熱量と温度の関係から、試料冷却とセンサーへの伝熱バランスを最適化することで、1桁程度の応答改善が可能であると考えられる。また、Nb3Snと同程度の転移温度を持ち、常伝導状態でより高い抵抗値を示すV3Gaを適用することやセンサーへの通電量の調整で1桁以上、電圧測定におけるノイズ低減により1桁程度の応答改善が可能と考えられ、本手法により1μW程度の試料の微小発熱測定を目指すことができる。
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