トカマクプラズマ中では磁場構造を工夫することにより熱・粒子の輸送が小さくなる、いわゆる輸送障壁が形成されることが知られている。その形成機構に関して、プラズマ中の微視的乱流から「帯状流」と呼ばれるポロイダル方向のプラズマ流が生成され、それが乱流を抑制して輸送障壁につながるということが考えられる。そこで、本研究では3次元電磁流体コードを用いて、イオン温度勾配によって駆動される乱流のシミュレーションを行い、磁場構造が乱流輸送に及ぼす影響を明らかにした。磁力線のピッチを表す安全係数がプラズマ中心以外で最小値をとる反転磁気シアトカマクにおいて、これまでより大きなプラズマサイズを想定したイオン乱流シミュレーションを行い、実験的に輸送障壁の形成が観測されている安全係数最小面の近傍において、より正確に言えば、磁力線方向のイオン音波の周波数が最大となるところにおいて、GAM(Geodesic Acoustic Mode)と呼ばれる時間的に振動する帯状流ではなく、乱流抑制効果の高い静的帯状流が生成され乱流輸送が抑えられることを明らかにした。また、小さなサイズを想定したパラメータにおいて、加熱により作られたイオン温度勾配で駆動されるイオン乱流の長時間シミュレーションを行った。このシミュレーションではイオン温度分布も乱流と共に時間発展する。これまでのイオン温度分布を固定したシミュレーションで用いたのと同じ安全係数分布を用いたところ、安全係数が低い反転磁気シアトカマクにおいて最も高い中心イオン温度を得た。この結果はイオンの加熱を含みイオン温度分布の時間発展を許した場合でも、安全係数による帯状流の性質の違いが、乱流輸送ひいてはイオン温度の分布形成に重要であることを示している。
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