本研究では実験に近い開放系のトーラスプラズマの第一原理シミュレーションの開発を行い、定常輸送や輸送遷移といった長時間の乱流シミュレーションが必要な問題を研究する。今年度は保存型ジャイロ運動論的トロイダルブラゾフコードGT5Dにおいて粒子衝突効果と熱・粒子源モデルの実装を行い、乱流相関時間の約千倍という長時間スケールのイオン温度勾配駆動(ITG)乱流シミュレーションを実現した。成果の概要は以下の通り。 1. 粒子衝突効果を線形フォッカープランク衝突演算子により実装し、軸対称計算のベンチマークにおいて新古典理論を再現することに成功した。 2. 長時間ITG乱流シミュレーションにおいてイオン温度分布を第一原理計算によって決定することに成功し、準定常状態のイオン温度分布が大域的に勾配特性長が一定となる指数関数分布を示し、また、この勾配特性長が径電場によって決まる非線形臨界温度勾配により拘束される分布の硬直性を示すことを発見した。 3. 乱流輸送の熱流束は間欠的な時間発展特性を示し、そのパワースペクトルは1/fのべき乗則を示すことから、ITG乱流の輸送現象が自己組織化臨界現象の特徴を示すことを発見した。 指数関数分布を示すイオン温度分布の硬直性、および、1/fスペクトルを示す熱輸送特性は実験的にも観測されている現象であり、これらの結果からGT5Dコードの定性的なValidationに成功した。以上の成果を第22回IAEA核融合エネルギー会議(口頭講演)等で発表した。
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