多次元気液二相流は、軽水型動力炉をはじめとして蓄熱・冷凍・冷蔵システム、電子回路冷却システムや化学工業分野における気泡反応塔など、多種多様な工業装置に利用されており、それらの機器・システムの運転特性や効率、経済性・安全性に深く関わっている。このような複雑な特性を持つ気相二相流の詳細解析手法として、一般的な二流体モデル(注:二相それぞれに定式化された質量、運動量、エネルギー保存式の計6式からなる方程式系)は、二相界面での相関相互作用を取り扱うことができるため、最も厳密なモデルであるとされている。しかし、二流体モデルがその真価を発揮するには、二相の相互作用の強さを表す界面輸送項の適切なモデル化が必要となる。本研究では、複雑な多次元気液二相流の相間相互作用を解明し、界面輸送構造をモデル化することを目的としており、本年度は、下記の研究を行った。(1)垂直空気一水気液二相流実験ループを構築した。(2)液体電磁流量計、空気ローターメーター、差圧発信器、熱線流速計等を含む計測系を整備した。(3)ベクトル解析による多センサー・プローブの界面計測理論開発を完了した。(4)フッ化水素水等を使用した化学エッチング処理法により光学式円錐状多センサー・プローブの製作方法を開発した。(5)垂直大口径管における高速現象撮影システムの画像処理法により多センサー・プローブの計測結果を実験検証した。(6)多センサー・プローブを用いて低流速における垂直大口径管二相流流動実験を行い、界面面積濃度と界面法線方向のデータベースを構築した。上記の研究成果より、(1)多次元気液二相流の局所計測が可能になった。(2)大口径管二相流が非擾乱流になる時、壁ピックの気泡断面分布が現れるが、他の流動様式になる時、中央ピックの気泡断面分布が現れることを分かった。(3)気泡法線方向とz軸間の角度の断面面積平均値を使って大口径管内多次元気液二相流の流動様式を定量的に四種類に分けた。
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