原子力発電においては炉内燃焼時間をより長くすることが求められており、被覆管材料の耐食性の向上のためにNbの添加が行われている。Nb添加の影響を評価するために、その熱・機械的物性データを取得するとともに、酸化・水素化挙動の評価を行う必要がある。 今年度は水素を析出させたZr-Nb合金についてEBSP測定を行い、その結晶方位を評価した。低水素濃度試料においては粒内および粒界に水素化物が析出し、その界面では水素化物の(111)面とα-Zrの(0001)面が一致するという過去の報告と同じ結果が得られた。しかし高水素濃度試料では粒子全体が水素化物となっており、ここでは隣接する水素化物の(100)面とα-Zrの(0001)面が一致するものがいくつか見られた。このような晶癖面は報告がなく、粒子が相変態する際の転位によるものと考えられる。これを確かめるため電子顕微鏡装置内に加熱ステージを取り付け、昇温させながらEBSP測定を行ったところ、水素化物から水素固溶体(α-Zr相)に変態した部分においても(100)面と(0001)面がほとんどの粒子で一致していることが確かめられた。このように加熱しながら水素化物の相変態挙動を評価した例はほとんどなく、被覆管強度に関する新規な知見が得られた。なお、ジルカロイについても行ったところ同様の結果が得られ、Nb添加による違いは見られなかった。 また水蒸気酸化させた試料について、表面から酸化膜のインデンテーション測定を行い、形成されたき裂長さの測定を行うことで破壊靱性値の評価を試みた。酸化量が少ない遷移前試料と比較して、酸化量が多い遷移後試料の酸化膜では明らかにき裂が多量にまた長く形成され、同じ酸化膜でも遷移後のものは脆いことが示唆された。酸化膜の強度評価についてはこれまで外観の観察による定性的なものしかなく、ひとつの評価手法を提案することができた。
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