現在の自動車業界において、その最大の研究開発目標は、いかに燃費を向上させるかにある。環境問題・エネルギー問題の観点から、今後石油系燃料の使用はますます制限されることが予想され、結果、少しでも無駄遣い無く効率よい燃料の消費が要求されている。しかしながら、一方で、自動車に投入される燃料の約七割が廃熱として捨てられているという現実がある。燃費向上のためには、この熱として捨てられているエネルギーをうまく回収し有効利用することが重要であり、これを実現するための一つの選択肢として、熱電発電があげられる。 このような背景のもと、本研究では、自動車からの廃熱エネルギーを効果的に回収し電力に変換する「高効率エネルギーリカバリーシステム(Energy Recovery System: ERS)」を具現化することを最終目的とし、それを実現するために、高性能熱電材料を開発し、それをもとに高出力熱電発電素子を実現することを目的としている。 本年度は、さまざまなテルライド・アンチモナイド熱電材料あるいは金属間化合物型熱電材料を作成し、熱伝導率、電気抵抗率(電気伝導率の逆数)、ゼーベック係数、ホール係数等の熱電特性を測定した。熱電発電に適した温度域として、室温から300℃付近までの中高温度域における熱電特性を重点的に評価した。 結果、一連のタリウムを含有するテルライド系材料が非常に低い熱伝導率を示し、それゆえ高性能熱電材料になりうることを見出した。また、希土類元素とニッケルあるいはパラジウムからなる三元系アンチモナイドが、非常に優れた電気的特性を示すことを見出した。
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