平成18年度に独自に開発した鉄鋼需要の将来推計モデルを、エネルギー・環境・経済の統合評価モデルとして知られているGRAPEモデルに統合した。また、モデルでの計算に必要なパラメータである鉄鉱石の資源量データを整備した。この統合モデルを用いることによって、将来の鉄鋼消費が世界のエネルギー消費や環境・経済にどのような影響を与えるかを検討することが可能となった。しばしば行われているような温室効果ガス排出だけに焦点を当てた検討ではなく、温暖化以外の環境影響についても分析できることが特徴である。 詳細な分析は未だ残されているが、モデルを用いてこれまでに得られた知見をまとめると次の通りである。1、製鉄に伴う一次エネルギー消費量は、2100年までに2000年の2.5倍である61×10^<18>ジュール(61EJ)に達する可能性があるが、製品の超寿命化とリサイクルの促進により、この消費量は4割以上削減できる。2、鉄鉱石の採掘に伴う総採取量(エコロジカルリュックサック)は一次エネルギー消費量は、2100年までに2000年の5.8倍である2.0×10^9トン(2.0Gt)に達する可能性があるが、製品の超寿命化とリサイクルの促進により、この量は6割削減できる。3、これらの環境負荷削減効果を得るためのリサイクル促進に対応するためには、将来的に電炉での製鉄を増加させ、建設向けの普通鉄鋼については全量、機械向けの高級鉄鋼についても4割以上を電炉法(直接還元製鉄法を含む)で生産することが望まれる。
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