研究概要 |
本研究では、超臨界成膜法を利用した半導体製造プロセスの設計基盤となる超臨界CO_2に対する金属錯体の溶解度に関する知見を蓄積し、金属錯体の分子構造が溶解度に与える影響を明らかにするとともに推算法の構築を行った。まず、溶解度測定に関しては新規に測定装置を開発した。極微少量サンプルの迅速な測定及び幅広い温度、圧力、濃度範囲の測定を可能とするため、従来用いられているプローブではなく、光ファイバーを利用した循環法に基づくものとした。測定した金属錯体はアセチルアセトナート(acac)を配位子に持つ錯体であり、Cu(acac)_2,Cr(acac)_3,Co(acac)_3及びFe(acac)_3である。温度及び圧力はそれぞれ313〜343K及び12〜30MPaである。測定の結果、配位子の数が大きい錯体の方が溶解度が大きくなることが分かった。これは、配位子数の増加によりCO_2との親和性が増えるためであると考える。さらに本研究の測定結果及びこれまでに報告されている文献値(テトラメチルヘプタンジオナート錯体)を利用し、量子化学計算から得られる表面電荷分布を用い、配位子の構造が溶解度に与える影響を理論的に考察した。その結果、B-ジケトナート錯体については金属と配位結合している酸素原子が炭化水素基に覆われ、CO_2分子と接触しない場合は酸素原子が露出している場合に比べ溶解度が大きくなることを明らかにした。 また、これまで溶解度の相関に利用されていたChrastil式と前述の量子化学計算から得られる表面電荷分布を用い推算式を構築した。その結果、5種のacac錯体について平均相対誤差20%以内で推算可能であった。溶解度が著しく小さい金属錯体に関する推算式はほとんど報告されていないため、非常に有用な式になると思われる。
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