脊椎動物におけるRh式血液型関連遺伝子のより正確な分子系統樹を作成するため、DNAデータベースに登録されているそれぞれの遺伝子のゲノム配列とmRNA配列の比較を行った。その結果、フグ(Takifugurubripes)のRhBG、RhCG、メダカ(Oryzias latipes)のRhBGにそれぞれコドンフレームが異なるような塩基のギャップが見られた。そのため、新たに抽出したゲノムDNAを用いて、該当部分の塩基配列決定を行い、より確かなアミノ酸コード領域の塩基配列を得て分子系統樹解析に用いた。また、脊椎動物におけるRh式血液型関連遺伝子のアミノ酸配列の多重整列の作成は、比較的整列可能なエクソン2から6までの領域に限定して行った。これらのエクソン構造はスーパーファミリーの多くの遺伝子で比較的保存されていた。なお、GC含量はクラスターごとの大きな差異はなかった。さらにそれぞれのクラスターごとのアミノ酸置換速度を比較したところ、RhAG、RhBG、RhCGでは、ニワトリのRhBG以外は、ほぼ同程度の置換速度であったが、Rhクラスターは、それら3クラスターよりも3〜4倍程度進化速度が速くなっていることが示された。一方、無顎類であるスナヤツメ(Lethenteron reissneri)から抽出したtotal RNAからは、昨年度得られた2つの遺伝子に加えてさらにもう1つのRh関連遺伝子が得られた。この遺伝子の系統的位置、および脊椎動物におけるRh式血液型関連遺伝子の分子系統樹の樹根の位置については、様々な系統樹作成法を用いて検討中である。
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