転移因子Long Interspersed Element (LINE)は、様々な真核生物のゲノム中に広く存在し、我々真核生物のゲノム進化に大きな影響を及ぼしていることが知られている。たとえば、ヒトゲノムDNA中にはおよそ85万コピーの転移因子LINE配列が存在し、ヒトゲノムの約20%を構成している。 LINEがいかにしてこのように莫大なコピー数を獲得することができたのか、その転移・増幅機構についてはいまだ多くのなぞが残されている。 LINEの転移・増幅には、自身のコードするタンパク質(LINEタンパク質)と宿主のコードするタンパク質(宿主タンパク質)がかかわると考えられている。 LINE転移におけるLINEタンパク質の機能解析は進められているが、LINE転移における宿主タンパク質の役割はほとんど解析されておらず、LINE転移にどのような宿主タンパク質が係わるのか明らかにされていない。私は、LINE転移にかかわる宿主タンパク質を同定するため、ニワトリDT40細胞内でLINE転移を検出する実験系を構築した。DT40細胞の様々な遺伝子欠損株を用いてLINEの転移頻度を測定することにより、宿主細胞のDNA修復系、特に非相同末端結合経路(NHEJ)に係わる宿主タンパク質がLINE転移に係わることを発見した。また、NHEJ欠損細胞株内でのLINE転移の解析により、NHEJ修復系が、LINE配列5'末端と宿主ゲノムの連結に関わることを見い出した。
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