研究概要 |
動物は外界からの情報を感覚神経で受容し、脳内の神経回路網で学習・記憶することで適切に行動することができる。現在の神経生物学において、感覚情報の受容から学習記憶、そして出力に至るまでの一連の神経回路とそれを構築する分子基盤の包括的解明こそが最重要課題の1つである。本研究では、線虫C. elegans温度に対する応答行動に関わるシンプルな神経回路を高次神経機能解析のモデル実験系と位置づけ、感覚情報の受容や学習記憶そして出力に至る分子・神経機構の包括的理解をめざし研究を行っている。 本年度において、主に得られた実績は、嗅覚ニューロンとして知られていた感覚ニューロンが温度を受容し、その温度情報伝達には哺乳類の視覚や嗅覚と同様にGタンパクが関与していることを明らかにした点と、温度情報処理に関わる神経回路を最新のカルシウムイメージング技術で明らかにした点である(Kuhara, Okumura, et. al.,Science, in press)。以上の研究成果は、特定の感覚応答行動を刺激の入力から行動としての出力までを分子-神経細胞-神経回路-個体行動の各階層レベルを統合して明らかにした点において、世界的に広く注目を集めている
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