塩基配列の解読が完了している分裂酵母ゲノムDNAからは少なくとも13種類のSETタンパク質遺伝子が見いだされる。その中でも核に局在する3つのSETタンパク質(Set3、Set11、Set13)に注目し、生化学的・遺伝学的手法を用いてメチル化酵素活性の有無の検討と、その生理機能の解析を行っている。前年行った研究により、Set11はタンパク質メチル化活性をもち、その基質タンパク質はRpl12であることが明らかになったが、本年度の研究では、質量分析による分裂酵母(野生株およびrpl12遺伝子欠損株)Rpl12の詳細な解析、そしてRpl12のリシン残基の変異体を用いたSet11メチル化酵素活性測定により、Set11の主要なメチル化部位がRpl12の3番目のリシンであることを明らかにした。set11遺伝子の欠損により、細胞内Rpl12のリボソームへの取り込みと、翻訳阻害剤シクロヘキシミドへの感受性は影響を受けなかったが、Set11-GFPが核小体に局在したことから、Set11は核小体でRpl12をメチル化し、その機能や安定性を調節している可能性がある。さらに、Set11高発現株に生育の遅延が認められたことから、細胞内のSet11発現レベルの調節が細胞の増殖に重要であることが示された。 このほか、Set13にもタンパク質メチル化活性が認められ、その基質タンパク質もリボソームタンパク質であることを明らかにした。
|