東北大学の実験圃場において、2本のシュートを持つつる植物(アサガオ)を育てた。シュートを水平にはわせることにより個葉の光条件を操作した。まず最初に、2本のシュートを持つ個体を2ヶ月間暗い条件で育て、その後に片方のシュートの光条件を明条件に変えた(ギャップ形成を想定)。さらに光環境の変化に応じて栄養条件を変える処理(貧栄養→富栄養)と変えない処理(貧栄養のまま)を設けた。生育期間中に4回にわたって様々な齢、光条件の葉の光-光合成曲線を測定した後に植物を刈り取り、葉面積、葉、茎、根の乾燥重量、および窒素含量を測定した。この結果に基づき、シュートレベルの生産性とその後のシュートの成長量の関係を調べた。 この結果、貧栄養処理をした個体の大部分では光条件が変化した後に暗シュートが枯れたのに対し、富栄養処理では光条件が変化した後でも暗シュートの生残している個体の割合が多かった。一方、葉の寿命は光、栄養条件によって変わらず、貧栄養では個葉のサイズが小さくなった。 以上の栄養条件に応じたシュートの成長や生残率の違いを植物個体の生産性という点から解釈するために、数理モデルを作成した。このモデルは葉の窒素、炭素の動態を考慮した葉群動態モデル(Hikosaka2003)を2本のシュート間で炭素、窒素の転流が起こることを考慮にいれて拡張したものである。2本のシュートの光環境が異なるときには、個体の栄養条件が悪いと暗シュートを枯らすことが個体の生産性を高めること、また、栄養条件がいいときには暗シュートが生残することが個体の生産性を高めていることが確かめられた。
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