研究概要 |
本研究の目的は、モンゴル草原において人工的な窒素散布実験を行い、近年地球規模で進行する窒素降下量の増加が、モンゴル草原の一次生産力および植生にどう影響するのかを明らかにすること、その変化が、当地域の主要産業である遊牧にどのような影響を与える可能性があるのか検討すること、過放牧よって裸地化した草原の回復における、窒素降下量増加の影響を評価することである。平成18年度はまず(1)窒素散布量を決定するための予備実験を行い、(2)実験調査区を設定し、(3)実験開始前の植生調査および窒素散布処理を行った。 1 窒素散布量の決定 調査地付近の自然植生に対し、窒素濃度と散布量の異なる10種類のNH_4NO_3溶液散布処理を行い、実験に適した条件を選定した。予備実験の結果に基づき、年間窒素散布量300mgN/m^2、1500mgN/m^2の2条件(溶液散布量は2mmの降水に相当)を適用することにした。 2 実験調査区の設定 平成18年9月初旬、バヤンオンジュールの均質な草原に実験区を設定した。家畜よけの柵で囲った禁牧区と、柵を設置しない自然植生区(それぞれ12m×12m)を1セットとし、それを4カ所に設定した。各区内にはそれぞれ、何も処理を行わない無処理区、窒素を含む液肥を散布する窒素散布区、液肥と同量の水のみを与える水散布区の3処理区(それぞれ4m×4.5m)を設けた。 3 植生調査 各処理区からランダムに選んだ小調査区(0.5m×0.5m)内の植生を調査した結果、イネ科の優占種4種(Agropyron cristatum, Cleistogenes squarrosa, Elymus chinensis, Stipa krylovii)を含む25種の出現が確認された。
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