本年度、調査計画では熱帯雨林での海外調査を行う予定であった。しかし、諸事情(実父の体調悪化(危篤)、2007年没)の事由のため、長期間日本を離れることができず、行うことができなかった。そこで本年度は、熊本県水俣市及び熊本市内の照葉樹林において、植物の地下部の形態を調査した。双子葉木本性植物樹種に加えて、単子葉木本樹種であるタケ(モウソウチク)の地下部(地下茎)についても、調査を行ったので、その結果について概要を報告する。 竹林の拡大はいたるところで問題となっており、熊本でも頻繁に観察される事象である。竹林の拡大は地下茎により行われるので、植物の地下部のアロメトリーを探る本研究課題のカバーする範囲である。熊本市内の竹林において地下茎のネットワークを掘り起こすことで確認した。モウソウチクの地下茎は、複雑なネットワークを形成し、各竿の関係は、位置が近いからと言って、直接地下茎でつながっているわけではないことが確認された。また、来春のタケノコの形成と関係する、休眠芽もいくつか観察された。これらの休眠芽は、地下形の上でランダムに分布しているようであった。 今回の調査では、長さの次元(地下茎の長さの関係)しか定量していない。今後は質量の次元も測定することで地下部アロメトリーをより深く理解し、地下茎の身長すなわち竹林分布に対する知見を深めたい。 また、この調査で地下部を観察するための作業時間等が大まかに推定できるようになった。この知見をもとに、来年度以降行う熱帯林内での地下部観察作業のスケジュールを作成する。
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