ヤブツバキとユキツバキの交雑帯がみられる新潟県と富山県における9箇所からサンプリングを行い239個体から改変CTAB法によりDNAを抽出した。さらに富山市科学博物館の太田道人専門学芸員から譲り受けた乾燥標本から11箇所に由来する79個体からDNAを抽出した。乾燥標本からのDNA抽出に際してはHEPESバッファーで洗浄した葉の粉末から改変CTAB法によりDNAを抽出した。昨年度に多型のスクリーニングを行ったチャに由来するESTマーカーの35個を使用してPCRを行いキャピラリーシークエンサーで泳動してPCR産物の長さをもとめ遺伝子型を決定した。さらに葉緑体DNA多型をスクリーニングして多型的な7個の領域について特異的PCRプライマーを設計してPCR後、キャピラリーシークエンサーで断片長多型を調べた。ESTマーカーの遺伝子型をもとにSTRUCTUREソフトウェアを用いて個体をクラスタリングした。その結果、クラスター数は2個と判断され、それぞれヤブツバキ型とユキツバキ型に対応した。また生育地が海岸から内陸に行くにつれてユキツバキ型が多くなることも明らかになった。葉緑体ハプロタイプは11個が見出された。ハプロタイプネットワークではユキツバキ型とヤブツバキ型のハプロタイプが区別できた。核に由来するESTマーカーでヤブツバキ型と判断された個体の中にもユキツバキ型の葉緑体ハプロタイプを持つ個体が存在した。ESTマーカーと葉緑体マーカーを用いることで交雑帯における遺伝的変異の分布が詳細に解明された。
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