1.Acaryochloris株の選択 Acaryochlorisは、種毎に吸収波長、蛍光波長それぞれのピークに違いがあり、3つのグループに分けられることを解明した。各Acaryochlorisから光化学系反応中心タンパク質をコードしている遺伝子をクローニングし配列を比較することで、波長の違いがクロロフィルそのものの違いではなく、残基の置換によるアンテナロクロロフィルの配向の違いによるものであることを解明した。この結果から、Acaryochlorisの種間でクロロフィル合成系は同一であると見なし、分光学的な解析や生化学的な解析の進んでいるAcaryochloris 11017株をライブラリー作製に用いることを決定した。 2.AcaryochlorisゲノムDNAライブラリーの作製 物理的剪断法及び、制限酵素による部分消化法を用いて、AcaryochlorisのゲノムDNAを目的サイズへ断片化する条件を検討し、それぞれの方法で最適な条件を決定した。 3.Acaryochlorisの人為的突然変異誘発、分子遺伝学的方法論の確立 クロロフィルdを合成しない株を作製する目的で、エチルメタンスルホン酸を用いてAcaryochlorisの細胞に人為的に突然変異を誘発する処理を施した。Acaryochlorisを抗生物質を含む培地で選択培養し、クロラムフェニコールが有効であることを決定した。この結果に基づき、時計遺伝子領域をターゲティング領域に用いたターゲティングベクターを作製した。 4.他の藍色細菌への遺伝子移入系の構築 遺伝子移入のホスト株として用いるSynechococcus 7942及び、Synechocystis 6803の両株用のターゲティングベクターをそれぞれ作製した。作製した各ターゲティングベクターを各ホスト株へ遺伝子移入したところ、各株の生育に影響はなかった。また、Acaryochloris由来のクロロフィル合成遺伝子の一つを各ホスト株へ遺伝子移入し過剰発現しても、各株の生育には影響はなかった。 5.クロロフィルdとクロロフィルaの互換性 クロロフィルd型とクロロフィルa型の反応中心タンパク質の互換性を検証するために、Synehococcus 7942の強光適応型、弱光適応型のそれぞれのpsbA遺伝子をAcaryochlorisのpsbA遺伝子で置換した株を作製した。
|