シロイヌナズナでは、受粉後8日目頃に胚の細胞分裂が停止し、14日目頃にABA含量がピークに達して休眠性を獲得すると考えられている。fus3変異体では、胚の細胞分裂停止の遅延とABA生合成量の低下が生じる。それゆえ、FUS3は、胚成長停止と休眠性の獲得を正に制御すると考えられるが、特に胚成長停止のメカニズムの詳細は不明である。そこで、今回、主に、FUS3人為的発現系形質転換植物を用いて解析した。実生でFUS3を異所発現させると、細胞分裂活性の著しい抑制が観察された。この形質転換植物にaba2変異を導入したところ表現型の部分的な消失しか観察されなかった。一方で、FUS3を異所発現させた実生では屈地性が消失すること、ならびに外から加えたオーキシンに対してのDR5レポーター誘導が消失することが見出された。さらに、fus3変異体種子ではDR5レポーターの異所的な発現が観察された。以上の結果は、FUS3が胚成長停止期でオーキシンシグナル伝達の抑制を正に制御することで細胞分裂活性の停止を制御していることを示唆する。そこで、FUS3の下流経路を明らかにするため、新規変異体の分離を試みた。FUS3人為的発現系植物を変異原処理し、FUS3の異所発現による成長停止が回避された変異体をスクリーニングした結果、胚の成長停止が遅延したと考えられる変異体を多数分離した(fga変異体;PZTS3-imposed growth arrest)。これら変異体のうち、fga1は、FUS3の異所発現による屈地性の消失が回復されたことより、FUS3の下流でオーキシンシグナル伝達の抑制に関与する遺伝子の変異体と考えられた。
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