植物の生長制御は、光環境に応じて生長が促進される器官と抑制される器官とに分けられる。これまでの解析から、葉身・葉柄の各々異なった光応答生長は、光受容体フィトクロムが重要な働きをしていること報告されている。しかし、そのシグナル伝達メカニズムについてほとんどわかっていない。 本研究目的である器官特異的な光応答メカニズムを制御する新奇因子を単離、探索するため、平成18年度は大規模なマイクロアレイ解析を実施した。光受容体フィトクロムは、赤色光を吸収すると活性型Pfrへ、近赤外光を吸収すると非活性型Prへと素早く転換する。そこでこの性質を利用して、植物に近赤外光パルスを照射することにより植物体内におけるフィトクロムシグナルを消失させ、その際の遺伝子発現変化を葉身・葉柄に分離してモニターした。その結果、2つの大きな特徴が見いだされた。 (1)本葉において、フィトクロムがPfrからPrへ転換することによって発現変動する全遺伝子中、葉身・葉柄間で発現パターンが共通して見られる遺伝子は全体の3割にも満たないことがわかった。このことから、各器官におけるフィトクロムシグナル伝達機構が大きく異なることが強く示唆された。さらに、葉身・葉柄で異なった発現パターンを示した遺伝子の中に重要な器官特異的フィトクロムシグナル伝達因子が含まれている可能性が考えられた。 (2)植物ホルモンであるオーキシンに応答する遣伝子が、全発現変動遺伝子の中で6割を占めることがわかった。この値は、その他の植物ホルモンの場合と比較して顕著に高いことから、本葉のフィトクロムシグナル応答にはオーキシン制御が大きく関与している可能性が示された。 今年度は、(1)と(2)の結果より、葉身、または葉柄特異的なフィトクロム応答するオーキシン関連遺伝子に着目し解析を行う予定である。
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