「研究成果の具体的内容」交付申請書に記載した研究実施計画に従い、以下の工程を進めた。 工程1.成分の同定 新たに、トリクロロ酢酸を用いた濃縮法を導入したことによって、被嚢抽出タンパク成分の粗精製作業の精度を上げることができた。抽出したタンパク成分は、タンパク分解酵素処理後、液体クロマトグラフィーおよび質量分析器に連続的にかけ、予定通り、ペプチド試料データを得た。得られたペプチドデータを、カタユウレイボヤ・ゲノムおよびEST情報に基づいたデータベースを利用して、予想遺伝子およびESTクローンに対応させた。 工程2.遺伝子発現解析 工程1で同定した成分のRNAプローブを作成し、in situハイブリダイゼーション法により、遺伝子発現解析を行った。この際、被嚢に非特異的なシグナルが大量に現れ、プローブ特異的なシグナルの読み取りを邪魔することが、新たな問題として浮上した。そこで、(1)ホヤのアセトンパウダーを作成し、プローブの精製前処理を行い、(2)セルロース分解酵素を利用して、非特異的なシグナルを有した被嚢を除去する方法を開発することにより、問題を解決した。 「研究成果の意義」従来不明であった被嚢構成タンパク質分子を同定したことは、今後の被嚢研究に必要不可欠な基礎データとして研究上の意義がある。また、研究実施計画通り、成分同定を行う実験系を立ち上げたことに科研費研究としての意義がある。 「研究成果の重要性」非特異的なシグナルを被嚢ごと除去する方法は、in situハイブリダイゼーション法の適用範囲を拡げた点、特に、従来は適用不可能であった発生後期のホヤ試料に対して適用可能とした点が重要である。
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