本研究は、1)シロイヌナズナおよびアズキ芽生えを遠心渦重力環境下で生育させ、微小管の構築と機能に関わる遺伝子群の発現に対する重力の作用を解析する、2)微小管の構築と機能に関わる遺伝子を改変した突然変異体の重力に対する反応性を解析することで、重力による微小管配向の調節機構を明らかにすることを目的としている。平成18年度は、1)および3)を行った。 まず、微小管原繊維の構成単位であるα-チューブリン[TUA1〜TUA6)およびβ-チューブリン(TUB1〜TUB9)の遺伝子発現に対する重力の影響を調べたところ、程度の差はあるもののすべての遺伝子の発現が重力の大きさが大きくなるにつれて増加した。また、γチューブリン遺伝子の発現は過重力により一過的に増加した。次に、様々な微小管結合タンパク質の発現を解析したところ、MAP65、MAP200(MOR1)、SPR1、SPR2の発現が過重力により減少した。ところが、微小管切断活性を持つカタニンの遺伝子発現は過重力により一過的に増加した。以上のことから、微小管の構築と機能に関わる多くの遺伝子の発現が重力により制御されていることが示された。特に、γ-チューブリンおよびカタニンの発現量は、微小管の配向変化に先立って速やかにかつ一過的に増加したことから、重力による微小管配向の調節において重要な役割を担っていると考えられる。 次に、α-チューブリン、β-チューブリン、MOR1、SPR1、SPR2およびカタニンの変異体の過去に対する反応性を解析したその結果、SPR1の変異体以外では、過重力による形態の変化は見られなかった。したがって、これらの微小管関連タンパク質は、重力による微小管の配向を介した形態変化に関与していると考えられる。 以上のように、微小管の構築と袴能に関わる多くのタンパク質が、重力による徴小管配向の調節に関与している可能性が示された。
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