研究課題
ポストゲノムとして種々の網羅的解析手法が提唱・実施されてきているが、さらに新しい視点が必要であると考える。そこで、私は、「個々の生体分子の機能を、細胞内微細構造の変化として捉えて可視化し、網羅的に解析する」という視点で、モルフォローム解析を行うことを提案した。野生型シロイヌナズナ個体において、(1)生殖細胞形成過程、(2)種子発芽過程、(3)茎頂分裂組織の3つのステージにおいて、時空間的に色素体の形態変化を観察した。固定法として、通常のオスミウム酸を使った化学固定と並行して、過マンガン酸カリ固定、及び加圧凍結固定をおこない、詳細な透過電子顕微鏡観察を行った。生殖細胞形成過程で、注目できるイベントとして、タペータム層にだけ存在する色素体(エライオプラスト)の存在と、雄性配偶体の花粉壁やポーレンコート成分(花粉認識・接着に働くといわれる)の形成があげられる。今年度の詳細な観察から、エライオプラスト内包成分の脂質の劇的な蓄積、エライオプラストから小胞子への物質輸送の特殊性などが明らかになった。種子内の色素体観察事例は、思いの外少ない。細胞内へのプロテインボディやリピッドボディの大量蓄積が、観察を困難にしているためである。今回、種々の固定法を検討した結果、過マンガン酸カリ固定を用いた方法が有用であることを見出した。乾燥種子から発芽後数日にわたって、劇的な内部変化と色素体分化をとらえることに成功した。茎頂分裂組織は常に未分化な状態であり、未分化な色素体であるプロプラスチドが生活環を越えて存在していると言われている。しかし、今年度の観察では、生殖細胞中および種子中の茎頂付近などを比較すると、プロプラスチドの大きさなど多種多様であり、幾通りものの色素体分化経路が存在することが明らかとなった。
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