研究概要 |
申請者がシロイヌナズナ子葉の表皮細胞で報告したbulbという液胞膜上の構造は,複雑な立体構造を持つ上,特定のタンパク質を濃縮したり排除したりするサブ領域と想定され,現在その機能と構造についての研究を行っている.今年度は遺伝学的な取り組みに着手した.順遺伝学:AtVAM3のプロモーターによってGFP-AtVam3遺伝子を発現させることにより,AtVAM3欠損変異体(vam3-1)の持つ巨視的な表現型が相補され,液胞膜とbulbが可視化される.すなわちこの形質転換植物においては,適正量なおかつ機能を維持した蛍光マーカータンパク質の発現でbulbを可視化していることになる.この形質転換体(pVAM3:GFP:VAM3/vam3-1#12-1)を親株に,変異体プールを作製した.M1種子にEMSを処理して変異を誘発し,約4000の独立のM1個体から,個体別にM2種子を回収した.この作業の過程で,vam3-1に酷似した表現型を示すものを含め,多数の(>240以上)巨視的な表現型を示すM1ラインを単離した.その大多数は,vam3-1が示す花成遅延や葉の形態異常よりもややマイルドな表現型として認識された.これがM2世代で同様な表現型を示すのであれば,優性の変異である可能性が高い.現在,効率の良いスクリーニングの戦略を構築中である.逆遺伝学:pVAM3:GFP:VAM3/vam3-1#12-1の様な,適正な発現量で液胞膜とbulbを可視化するラインを用い,既に液胞の形態に異常が報告されている既知の変異体との掛け合わせを行った.現在F2世代を選抜中である.
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