研究概要 |
本研究の目的は、ヒドラの生体制御に関わるペプチド分子とその受容体(Gタンパク質共役型受容体;GPCR)を同時に同定することにある。これまでにヒドラESTプロジェクトから約40種のGPCR遺伝子の全長cDNAを調整した。そのうちの9種について、これまで同定した神経ペプチド(Takahashi et al.,2006)に対する反応を細胞培養系及びアフリカツメガエル卵母細胞系を用いて調べたが同定に至らなかった。ヒドラペプチドプロジェクトにより、新たに新規神経ペプチド2種(FRamides)を同定し、その機能を解析した(Hayakawa et al.,投稿中)。この2種の神経ペプチドに対する受容体を現在同定中である。また、リガンドの候補として、マイクロアレイ及びin situハイブリダイゼーション法により、神経特異的に発現するペプチドの前駆体遺伝子を同定した。現在、この前駆体遺伝子上にある神経ペプチドの構造を推定中である。ヒドラESTデータベース上からオーファンGPCR遺伝子を抽出する過程で、アセチルコリンに対するムスカリン性アセチルコリン受容体を3種同定した。この結果は、刺胞動物における受容体とそのリガンド同定の初めての例であるということだけでなく、ヒドラにアセチルコリンが存在し、"ヒドラには古典的伝達物質のアセチルコリンは存在しない"というこれまでの定説を覆す新たな知見である。これら3種の受容体の発現細胞は今のところ不明である。そこで、これら受容体の発現細胞を同定する目的で、マイクロインジェクション法を用いてトランスジェニックヒドラの作成に着手する予定である。
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