さまざまな蛍光蛋白質のライブラリーにおいて、結晶構造から、プログラムGraspを用いて、電気双極子モーメントを計算機上で推定した。結晶構造が得られていないものに関しては、構造情報があり、尚且つ系統的に最も近縁と考えられるもののアミノ酸側鎖を改変し構造最適化を行う事により推定した。単量体あたり、多くのものは100〜400Debye(1Debye=3.33564x10^<-30>C m)であると推測されたが、中には700Debyeに達すると推測されるものがあり、またそれは、生理学的な条件化で多量体形成が非常に起こり難い分子でもあるので、今回の目的に有用であると考えた。その蛋白質に、分子生理学的手法により、さらにDipoleを増大し、尚且つ、発色団形成能を損なわないようなアミノ酸変異を複数導入することに成功した。作製した蛍光蛋白質を、HEK293T細胞において形質膜直下にターゲットして発現させ、その配向の膜電位感受性を直線偏光での励起により測定したが、その変化は未だ測定できていない。細胞での評価は、より実際的ではあるものの、多くのサンプルを試す場合には効率がわるい。そこで、インビトロでの評価ができるよう、微小電極ギャップを持つチャンバーを用いた測定系を構築した。また、細胞において、配向の測定に直線偏光で励起するという方法では、平滑な膜を光学的に十分な解像度の元で観察しなければならない。Hela細胞のように、形質膜膜が微細構造をもつ場合、そうでなくても、低倍率下で複数の細胞集団に対して測定する場合にはこの方法を用いる事はできない。これらの場合にも適応するため、異なる波長特性とDipoleを持った二つの蛍光蛋白質を、セリンやグリシンといった柔らかいアミノ酸側鎖で構成されたリンカーで繋ぎ、蛍光エネルギー移動により配向変化が検知できる可能性がある分子群を多種作製した。
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