研究概要 |
今年度は,ターゲットとなる遺伝子領域と,それらを増幅するプライマーの選定を行った.準新翅類に広範に適用でき,本研究の目的に適した領域として,核の18S rDNA, Histone 3, Wingless,ミトコンドリアの12S rDNA, 16S rDNA, COI領域をターゲットとして決定した.さらにパイロット研究として,これらの遺伝子領域を用いてチャタテムシ目チャタテ科の高次系統関係の推定,およびそれぞれの遺伝子領域の進化速度・系統情報の比較等を行った. その他の分類群に関しても,これら領域のPCR増幅およびシーケンス解析を進めており,データの欠失が残っているものの,現在のところ160サンプル超の解析を終えている. また,以前に行った分子系統解析の結果を再検討する目的で,形態形質に基づく系統解析も会わせて行った.シラミとチャタテムシの雄交尾器に基づく解析では,18S rDNA遺伝子に基づく解析結果を支持する結果が得られた.一方で,ジュズヒゲムシZorapteraの翅の基部構造の解析では,18S rDNAの結果を強く否定する結果が得られた.ジュズヒゲムシの18S rDNAは極めて特異的な分子進化傾向を示すことが知られており,既存の系統解析の手法では,そのような特異的な進化傾向を示す領域からは,有効な系統情報を取り出すことが極めて困難であることが示唆された.
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