研究概要 |
・ 18S, Histone3, Wingless, 16S, COIの5遺伝子座と,ほぼ全ての高次分類群をカバーする85サンプルを用いて系統解析を行い,シラミとチャタテムシの高次系統関係を推定した.同時解析により,シラミ目マルツノチャタテ亜目と,チャタテムシ目コナチャタテ科が姉妹群関係にあること,つまりンラミ目が多系統群であることが強く支持された.一方,遺伝子を個別にまたは一部のみ結合させて解析った結果,18S以外の遺伝子座にはこの仮説を支持する情報がほとんど含まれていないことが明らかとなった. ・ 解析したほぼ全ての遺伝子において,塩基置換速度の加速,塩基組成の変化,RNA二次構造の変化と言った特異的な進化傾向が,シラミ目とコナチャタテ科において確認された.一方,核の蛋白コード領域では,有意な塩基置換速度の加速は確認されなかった.今後このグループの系統解析に当たっては,核の蛋白領域の利用が最も効率的であることが示唆された. ・ シカバジラミのミトコンドリアゲノムが,一般的な一本の環状ゲノムではなく,複数の微小環によって構成されていることを明らかにした.個々の微小環は,一つの蛋白/リボソームコード領域と,少数のtRNAコード領域,およびコントロール領域として機能していると考えられる非コード領域から構成されていた.リボソームRNAの載った微小環のコントロール領域には,COI部分配列と相同性の高い領域が含まれており,微小環の間で組み替えが生じている可能性が示唆された.
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