1.「日本産繊毛虫類・有殻アメーバ類生息種情報データベース」 日本から記録された全ての繊毛虫類と有殻アメーバ類の記録調査のために、海域、淡水域、土壌、生活環境、温泉など自由生活性の原生生物の調査記録の掲載されている可能性のある文献(図鑑、図説、学会誌、大学の紀要、生物調査報告書など)の収集を、予想される文献の85%〜90%程度まで完了した。また、繊毛虫類で重複を含めて、のべ4665種のデータ入力を終了した。学会誌に公開準備中である。 2.single cell PCRを用いた野外株からの塩基配列解析系の確立 現在、申請者の研究室では、1つの細胞からPCRを行うことが可能である。また、原生動物の固定に用いるオスミウム酸がsingle cell PCRを阻害することが経験上わかっている。そのため、走査型電子顕微鏡で観察可能な固定条件を探しながら、培養不可能な自由生活性原生動物における単一細胞由来のリボゾーム遺伝子配列の情報の蓄積を検討した。その結果、繊毛虫類で単一細胞の光学顕微鏡観察後(写真撮影等)、PCRとリボゾーム遺伝子配列の確認までを行う実験系が確立され、この手法を利用して、Foissneret.al(2008)として、新属新種の地域特異的繊毛虫種を、古代湖としての琵琶湖から記載し、分子生物学的情報に基づいて系統関係および遺伝的距離などを報告した。 3.繊毛虫類single cell PCRに用いる特異的プライマーは、クローンライブラリー解析により、野外土壌などから得られた環境DNAに適用しても、繊毛虫類以外の生物を検出する例は少なく(4-6%)また、培養・顕微鏡的手法よりも、土壌では、繊毛虫類の多くの高次分類群、かつ多くの種を検出することが可能である結果が得られた。
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