研究概要 |
日本列島の東北地方高山帯におけるボトルネック効果や創始者効果といった過去の集団サイズの縮小・拡大を推定するために、エゾシオガマ(Pedicularis yezoensis, ゴマノハグサ科)のマイクロサテライトマーカーの開発を行った。マーカーの開発は Lian et.al. (2006)の手法に沿って行い、計18組のプライマーを設計し、北海道集団(暑寒別岳)8個体、東北集団(八甲田山)8個体、本州中部集団(赤石岳)8個体の計24個体のエゾシオガマをそれぞれのプライマーでPCR増幅した後、フラグメントの断片長の推定を行った。18組のプライマーペアのうち、明遼なバンドが検出されたものや種内多型が見られるマーカーを選別した結果、6組のマーカー(AC01、AC08、AC12、AC41、TC13、TC45)が残った。アリル数(A)は3〜16、ヘテロ接合度の観察値(Ho)は0.000〜0.667、ヘテロ接合度の期待値(He)は0.640〜0.912に範囲し、AC08を除いてハーディ・ワインベルグ平衡からの有意なずれは検出されなかった。比較的高い多型性を示したマーカーはAC41であった。また、AC12は集団内での多型が検出されず、集団内の多様性の評価には適さないことがわかった。残りの4組のマーカーを用いて上記3集団間における遺伝的多様性を予備的に評価したところ、東北集団が北海道集団、本州中部集団に比べて低い傾向が見られた。この結果は、東北地方の集団において過去に創始者効果、もしくはボトルネック効果が働いたことを支持するものである。今後は新規マーカーを開発すること、集団数・個体数を増やすことを目指す予定である。
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