一過的な遺伝子発現の影響を見るためにPpLFY1遺伝子のnu11変異体の作出を進めた。PpLFY1遺伝子のコード領域を薬剤耐性を付与するハイグロマイシンカセットで置き換えたコンストラクトを作製して、PEG法でヒメツリガネゴケに導入した。しかしこのコンストラクトは狙い通りにゲノムDNA領域に挿入された場合でも、形質転換体はハイグロマイシンを含む培地での生育が非常に悪い事が分かった。形質転換体は緑色はとどめていて死滅はしないが、大部分のものが数細胞の段階で成長がほぼ止まっていて、コロニーサイズが大きくならなかった。そこで形質転換体をハイグロマイシンフリーの培地に移植して解析を進めた。原糸体の段階では生育が悪い事を除けば野生株と比べて顕著な形態異常は観察されなかった。以前に作製した、PpLFY1遺伝子のコード領域中にハイグロマイシンカセットを挿入した変異体では、胞子体の形成に異常が見られたので、今回作出したnu11変異体もさらに先の発生段階まで観察を進める予定である。 またPpLFY1遺伝子の標的遺伝子を同定するためのChIP実験のために、PpLFY1遺伝子の抗体が必要となる。抗原としてHisタグ組換えタンパク質を用いることとし、それを大腸菌で発現させて、抗原の精製を行った。組換えタンパク質の発現条件を最適化して効率よく抗原を回収しようと試みたが収量の大幅な増加は難しかったので、実験を繰り返す事で必要な量の抗原を集めた。
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