研究課題
特定の生物群全体の系統関係を把握することは、その生物の概要を理解する上で基礎となる重要な情報である。本研究課題では、世界中に広く分布し、大分部が特異な形態や生態を示す地域固有種であるシャジクモ藻類Nitella属に焦点を絞り、そのほとんど全ての重要な種を採集し、分子系統解析によって全系統関係を解明する。具体的には、Nitella属全3亜属15節49種のうち11種は既に先行研究によって研究されているので、本研究では残りの38種中、日本固有種2種、ヨーロッパ固有種1種、オーストラリア・ニュージーランド固有種16種、北中米固有種2種(合計21の固有種)を新たに採集し、現地でのフィールド調査が困難であるアフリカ固有の2種を除く全3亜属13節47種の約60%(32種)をカバーした分子系統解析を実施する。本年度は平成19年4月から平成20年10月にわたりフィールド調査を行い、これまで未解析であった2節を含む多くの種を新たに採集した。本年度までに収集できたすべての種(3亜属12節22種)を用いて分子系統解析を実施した結果、フラスコモ属は単系統群(共通祖先から派生した種をすべて含むグループ)ではなく、また従来の3亜属もすべて多系統群または側系統群であることが新たに判明した。さらに大部分の節や種も多系統群または側系統群であることがわかった。したがって、今回明らかとなった実際の系統関係に基づいて従来の分類体系(Wood1965)を大幅に再編成する必要がある。今後、最終年度までに詳細な形態データ解析および分類形質の再検討を完了させ、新分類体系構築への方向性を示す予定である。
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Phycologia 47
ページ: 191-202
Phycological Research 56
ページ: 202-215
http://www.nies.go.jp/biology/mcc/Chara2006/chara-index.htm