研究概要 |
平成20年11月13日-18日、マレーシア・サバ州のクロッカー山脈中にあるフレキシスタイリーを示さないAlpinia nieuwenhuiziiの集団(以下非フレキシ集団と略)で、開花のフェノロジーの観察と送粉者の観察を行った。観察期間中、非フレキシ集団の4個体が開花しており、うち2個体は開花した全ての花で開花中に柱頭の動きが観察されず、あとの2個体は開花した花の一部(個体1:5花中1花. 個体2:17花中2花)で柱頭が葯の背側から腹側に動くのが観察されたが、残りの花は柱頭がまらたく動かなかった。また非フレキシ集団の開花個体には、4日の観察期間中コシブトハナバチの一種が62回、バリナシバチの一種が35回、クマバチの一種が2回訪花した。訪花したハチのうち、クマバチは花サイズと体サイズが合致しており、送粉者として有効に機能していると考えられるが、残りの2種は花サイズと比較して体長が小さく、捕獲した個体の体にも花粉の付着は認められなかったことから、送粉者として有効に機能しているかは今後の調査によりさらに検討する必要がある。先行して行った、 A. nieuwenhuiziiのフレキシスタイリー集団においては、主な訪花者および送粉者はクマバチであったので(Takano et al. 2005)、フレキシ集団と非フレキシ集団では送粉者が異なる可能性が示唆された。非フレキシ集団の4個体とフレキシ集団の7個体について、葉緑体DNAのtrnL-F遺伝子間領域および, 核リボソームDNAのInternal Transcribed Spacer領域1と2の塩基配列を決定し比較したが、塩基配列の違いは検出されなかった。現在、フレキシ集団と非フレキシ集団の遺伝的変異と分化の程度を明らかにするべく、ISSR法により遺伝的多型の検出を行っている。
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