研究概要 |
本課題はヤドリムシ亜目甲殻類の分類学および系統学に主眼を置いた研究である。北九州市立自然史・歴史博物館に保管されている十脚目甲殻類(エビ・カニ類)標本の中からヤドリムシ類に罹患しているものを探し出しリストアップを行った(昨年度からの継続)。その後,宿主となる十脚目甲殻類の鯉室や腹部からヤドリムシを摘出した。調査航海は広島大学生物生産学部附属練習船豊潮丸の土佐湾航海に参加し,宿主甲殻類の採集を行った。上記の調査によって得られた標本を形態形質に基づいて分類学的研究を行った。研究は解剖→プレパラート作成→観察→同定→記載の順で行つた。実体顕微鏡下で付属肢を電解研磨により鋭く尖らせたタングステン針を用いてはずした後,スライドグラス上にガムクロラールで封入し,微分干渉顕微鏡を用いて形態観察を行った。その一部は走査型電子顕微鏡を用いて微細構造を観察した。論文作成,学会講演用に各形質を描画装置を用いてトレースを行い,顕微鏡用カメラで撮影を行った。特に南西諸島から採集されたアミヤドリムシの一種であるHeterophryxus appendiculatusは太平洋からの初記録であり,詳細に分類学的研究を行い,他海域から得られた本種とされる種との比較を試みた。また,本種が寄生していたオキアミの一種はこれまで知られていないホスト(宿主)であった。これらの研究成果はProceedings of the Biological Societyof Washington誌に掲載が決定している。さらに,一種のホズト(Siriella okadai)をめぐる2種の寄生性甲殻類(Prodajus curviabdominalis,Neomysidion rahotsu)についての生態学的論文を執筆した。現在,その他の標本について分類学的な記載論文を作成中の他,分子系統解析実験の準備を進めている。
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