哺乳類のヘムオキシゲナーゼには、種々の刺激によって発現が誘導されるHO-1と発現量が大幅に変化しないHO-2の二種類のアイソザイムがあり、それぞれ、脾臓・肝臓と脳・精巣に多く発現している。HO-2はHO-1には見られないシステイン-プロリンが連続したCPモチーフを三か所持ち、HO-1よりN末端側が20残基ほど長い。今年度は、高分解能回折像を示すヒト由来HO-2の結晶を作成するため、結晶化条件の検討・放射光施設に於ける回折強度実験を行ってきた。 まず、結晶化条件だが、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル500(PEG MME 500)とチオシアン酸ナトリウムを含んだ溶液をリザーバー溶液としたハンギングドロップ蒸気拡散法で、振とう培養機でゆるやかに振とうさせながら結晶化を行うことで、比較的良質な結晶を得た。また、クライオプロテクタントの条件の検討を行い、パラトンNをクライオプロテクタントとして使用することで、構造解析可能な回折像を得た。 回折強度データ収集実験は、主にPhoton Factory (PF)で行い、上述した条件で、最高2.0Å分解能に相当するデータを得た。 構造解析は、最近報告された変異体のHO-2の構造を初期モデルとした分子置換法で行った。2.0Å分解能の構造解析の結果、現在までに報告されていないことも明らかになりつつある。現在は、より詳細な解析を目指し、更なる結晶化条件の検討を行うと同時に、その酵素反応や機能の解明のため、生化学的な研究も進めている。
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